詩は友人を数える方法 - 長田弘

たとえば、霧だ。
濃い霧が道をすっぽりと覆っていた。海沿いの道だった。海からのつよい風が車に殴りかかって、目のまえの霧を一瞬さっと吹き飛ばすと、黒い海がそこにひろがっていた。海にかぶさるように、灰色の雲が幾重にもかさなって、低く激しく動いていた。港の入口の灯台の赤い灯がさっと閃いて、旋ってゆく。白い波がしらがまっすぐ一列にすすんできて、港の防波堤で、叫び声のように、一どに真っ白な水沫をあげた。

--- 長田弘「詩は友人を数える方法」より

(こんな質感のある文章をいつか書いてみたいと思う)