精霊のノック

カルロス・カスタネダドン・ファン・シリーズと呼ばれる一連の著作には、カリフォルニア大学で文化人類学を学ぶカスタネダが、研究の対象として出会った北メキシコの呪術師ドン・ファン・マトゥスに弟子入りする経緯が綴られています。


このシリーズの一冊「沈黙の力」では、人間が呪術の修行の道に入っていく道筋について、神話的物語の枠組みとして語られているのですが、その枠組の一番初めのエピソードが「精霊のノック」と呼ばれるものです。
「精霊のノック」は、呪術の修行の道を行くものが、その道に入ることになるきっかけのことで、呪術師の弟子としてカスタネダは自身にとっての「精霊のノック」がどんなものであったか、はっきり思い出し十分に意識するよう師のドン・ファンから申し渡されるわけです。


自分の経験に即していうと、魂の成長の道行きにおいて特に師と呼ぶべき存在のいないぼくは、直接的なきっかけというほどのものはないのですが、本を読むという間接的な体験に関して言えば、今までにも何度か書いた「なまけ者のさとり方」との出会いが「精霊のノック」に当たるのだろうなと思っています。
ずいぶんと神秘的な物の見方をするようになった今でも、ぼくの生きる上での拠り所の一つは、科学的で合理的な立場にありますが、合理的であってなおかつ神秘的な立ち方があるのだとぼくに教えてくれ、神秘主義のとばぐちにぼくを立たせてくれたのがこの本だったのです。


こんなぼくの個人的な振り返りも含め、このサイトに書き綴っている事柄が、ひょっとしてあなたにとっての「精霊のノック」につながったらいいなと思いますし、「沈黙の力」に描かれるカスタネダの師ドン・ファンや、そのまた師匠ナワール・フリアンの呪術との出会いの物語は、これまた大変おもしろいものですので、機会があったら是非ご一読ください。


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ではみなさんも、楽しい修行の日々を!!